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『わたしの腰痛物語』第十二話

第十二話

KEY ~激怒~


4トントラックの仕事は過酷だった。
作業も、運転も、指導も。

月に二度三度、最大積載重量2.3トンのトラックに7.5トン(伝票上)積み込む日があった。
タイヤはグニャリと曲がり、ギアは1足でゆっくり発進しなければエンストするほどだ。

夢だった「トラック」に乗っているのに、気分は盛り上がらない。
つねに心に闇があり、人間的に大の苦手意識があった指導員が隣に乗っている。
盛り上がるはずもない。

この頃になるとYouTubeニコニコ動画を見ているときのみ、人間だった。
この時だけ、死にたい気持ちがざわつかなかった。

タイヤ交換の時期が近づき、いつ交換するか、指導員といつも相談していた。


そしてその日は大雨が降っていた。


タイヤはびちゃびちゃ、雨もザーザー、これは中止だろうなと思い、会社に戻り、整備庫へは向かわず駐車場の方に行き、トラックを停めると指導員は怒り出してしまった。
トラックを降り、なにがいけなかったのか聞いた。

中止するかどうか、まず指導員に聞くのが筋だろう、なんのための指導員なのか、なめるのもいい加減にしろ

とのことだった。

本当ならすみませんと、謝罪の気持ちが沸くはずなのだが、その時は沸かない。

そもそも心の闇※で、動揺とは無縁のこれ以上ないほど静まり返った心の私には何を言っても喜怒哀楽を感じないのだから。

※病院では鬱と診断されていないため闇と表記しています

だが、謝罪のきもちは沸かない代わりに怒りが込み上げた。

なめるのもいい加減にしろといったとき、その指導員はトラックの鍵を地面に叩きつけたのだ。

それが頭に来た。

たしかに相談しなかったことは悪かった、しかしだ、仕事道具の、トラックの、鍵を、地面に叩きつけるたぁどういう了見だ


こいつは自分より社歴も経験も歳も上かもしれないが、物を大切にできないやつは、プロのトラックドライバーじゃないな

物を運ぶ職業のプロが、物を地面に叩きつけるなんて、最悪だ。
プロ意識の欠片もない。

この人にはついていかない。

私はそう決めた。


そして、わたしは一人立ちし、プロの4トントラックドライバーになった。

荷物もお客様も、大切にし、同業のドライバーも大切にし、回りに気を使い、常に笑顔で仕事をした。
マグロの大手企業からのスカウトをうけるほどには回りからの信頼も築けた。
運転技術もデジタルタコグラフという機械で常に安全、経費、総合の全てで100点を取りつづけた。
(結構すごいこと、仙台支店では私だけが出来た)

この頃には、食事をとらないなんて当たり前、家に帰れば着替えもせず眠る
家では誰とも口も聞かなくなった。

恐らく会社の人もお客様方も、同期も、私がこうなっているのは気がついていない様子だった。


その頃だった。


私は堀江孝文の動画に出会った。
YouTubeホリエモンチャンネルである。

彼は言う、やりたいことだけやればいい、一人いなくなったからって、それで社会が回らなくなるなんてことはない、代わりはいくらでもいる、それが会社だから
やりたくないならやめればいい、やりたくないのに低賃金でいつまでも続けるやつがいるからいつまでも最低賃金が上がらない
どうしても必要な仕事なら、人がいなくて困ったら値上げするしかないんだから、みんなやめればいいのに



心に刺さる言葉たち、彼には俺なんかよりひろいひろい目線を持っていて、物事の本質を深く掘り下げる能力があるんだ。
そんな人が辞めていいと、言っている。

親も、心の中のもう一人の自分も許さないのに、この人は許してくれる。

なら・・・







それでもどうしても会社をやめる決断ができないで、時には泣きながらトラックのハンドルを握った。

ずっと大好きだったトラックのハンドルを




つづく


judgment
『わたしの腰痛物語』第十三話 - 正守式投資あふぃり