『わたしの腰痛物語』第七話
第七話
GUILTY ~嘘は死に値する~
私は中学時代に驚異的に影響されたドラマがある。菅野美穂、玉木宏主演、『ギルティ』。
「嘘をつき人を騙して陥れる行為は死に値する」
菅野美穂が演じる主人公は過去に濡れ衣を着せられ、検事、弁護士など多数の関係者に陥れられ、裁判で有罪、服役し、出所後自分を騙した弁護士などを逆に騙し、自殺に追い込む復讐物語。
わたしが魅せられたのは「嘘をつく重さ」
嘘をつくことは絶対にしてはならない、それは死に値することだ。
小さい頃から素直すぎるがゆえに、同級生たちに「嘘」をつかれバカにされたりしてきたわたしにとって、自分は「正しく」、嘘をついてきた同級生たちは「間違い」であると、裏付けがとれたと、思ったからだ。
私は嘘はつかない、正しく生きる。正しい行為が全て正しいのだと、その当時は思っていた。
しかし私はわずか数年で嘘をつくはめになるのだが。
春休みを抜け高校二年生になった。
「勉強」は出来なかったが「学習」は得意だったので成績はクラスで上位3位以内。学年でも3位以内だったので留年の心配など欠片もなかった。
心配なのは腰だけだった。
ぎっくり腰発症から1ヶ月がたっても変わらず痛みは完全にはとれなかった。
母にあの言葉を言われてから病院にもいっていなかった。
「何でお前なんかのために」
いま考えても母親が息子にかけて良い言葉ではない。
母は幼くしてわたしを産んだ。だからあの人の時間はおそらく、その「時」で止まっているのだ。
子が出来た時点で女は母になるが、大人になるわけではない。
あの人は母ではあるが大人ではないのだ。
春から夏は農業高校は忙しい。
勉強→畝作り→勉強→種まき→勉強→草取り→観察→勉強→草取り→「観察→収穫、袋詰め、訪問販売→勉強、観察→収穫、袋詰め、訪問販売」
カッコの中をひたすらに繰り返す日々。
健康な体であっても楽ではない。
ましてや腰に爆弾がある人間にとっては。
気がつくといくつもの鎖が自分を縛っていた。
高校在学中の腰痛と言う鎖。
農作業をやりたい気持ちの鎖。
いくつもの「母」の言葉の鎖。
将来つきたい仕事の鎖。
いくつもの鎖が私にたくさんの嘘をつかせた。
学校に。同級生に。母に。
就職面接時の上司に。
そして自分自身に。
つづく。
次回
first end