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『わたしの腰痛物語』第二話

わたしの腰痛物語



第二話

Hearless cry ~思いだけでも力だけでも~




歯を磨き終え、リビングに戻ると、母が湿布を持って待っていた。
貼ってくれると言うので、シャツを脱ぎ、リビングの床に腹ばいで寝そべる。


「痛いのどのへん?」


この時はじめて気がついた。


「この体勢だとまったくなんともない」


はぁ?と、母に威嚇される。当たり前だ、朝は主婦にとって忙しい時間。母はさっさと済ませてキッチンに戻りたいのだ。
腰の違和感のあった範囲を手を背中に回し、説明した。湿布が小さく、結果、違和感のある範囲全面に貼ってもらうと、湿布を三枚も使った。


学校に行くにはまだ時間が早かったので10分ほどそのままの姿勢で休むことにした。
いつもと変わらないテレビ。映し出されていたのはいつも見ていた、めざましテレビ

「美郷ちゃんは今日もかわいい。」

私は当時のお天気お姉さん、長野美郷さんに熱をあげていた。
いや、過去形ではない。現在もその熱は消えることなくわたしのなかにたしかにある。

時間は流れ占いのコーナーが始まる。そろそろ着替えて出発しなければ、電車に間に合わない。
いつものように手で床を押し、四つん這いになろうとする。











理解を超えた絶望的痛み。


そもそも床と胸が離れない。
頭が混乱する。身体を持ち上げようとすると、さっき湿布を張ったエリアが砕け散るような激しい痛みが脳天まで突き抜けて行く。
2度目のチャレンジはない。
1度でわかる。だめだこれは。

すぐに母を呼ぶ。
弁当作りを中止してもらうためだ。もし、弁当が完成したあと、学校を休むなど口にすれば、その後のことを想像するだけでおぞましい。それは今、腰を襲った痛みを遥かに上回る恐怖。
それだけは避けなければならない。

「腰痛すぎて動けなくなった(笑)担任には自分で連絡するから、とりあえず弁当積めるの中止してー」

できるだけ陽気に、逆鱗に触れぬよう慎重に言葉を選んだ。

もうちょっと早く言えよ、とだけ告げられ、すぐにキッチンに戻っていった。


わたしの通う高校は、俗に言う「不良」が多く、無断欠席、無断外出、無断早退、タバコに飲酒、万引きが日常で起こる学校だった。
タバコに飲酒、万引きは警察の管轄になるのだろうが、無断欠席、無断早退は、担任の責任となるようで

「来ないなら来ないでいいから俺にメールだけいれろ、帰るなら帰るで止めねぇから連絡だけはしろ」

と、クラス全員が担任のメールアドレスを知っていたので、すぐにメールを送る。

「くしゃみをしたら、腰がいたくなって動けなくなりました。今日休みます」

すぐに返事がきた。


「それはぎっくり腰ではないのですか?とにかくお大事に。いけるようなら病院へ」


・・・ぎっくり腰?

なにを言っている。ぎっくり腰って、あの友人のなったあれのこと?ドラマとかCMでみる「ぐきっ!」ってあれ?そんなまさか。くしゃみで?それにしばらく動けたし、ぐきっ!ともなってないぞ。

さんざん茶化した自分がぎっくり腰?
その可能性を否定するための「言い訳」がドンドン自分のなかで産み出されていく。

そんなはずがない。

そう願うように、スマートフォンGoogleで検索をかける。


「ぎっくり腰 くしゃみ」


ずらりと並ぶ、私がぎっくり腰であるという証拠たち。
たくさんの人の経験談。科学的にくしゃみの衝撃を時速に換算した記事もあった。

私は遅生まれで誕生日は3月頭だった。

16歳、ぎっくり腰になる。


しかし、私を襲った悲劇は始まりにすぎなかった。


つづく。


第三話

repeat&fault『わたしの腰痛物語』第三話 - 正守式投資あふぃり